天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「!?」

驚く乙女レインボーと、一歩前に出たサーシャの体が交差する。

そして、地面に着地した乙女レインボーは絶句した。眼鏡の左側のレンズにヒビが入っていたからだ。

「チッ」

乙女レインボーは舌打ちすると、後方にジャンプし、そのまま…姿を消した。

「…フレア!」

戦いの余韻に浸る暇もなく、サーシャは振り返った。



「く、来るな!」

半月ソルジャーの腰につけているオウパーツから、振動波が放たれていた。

すべての攻撃を跳ね返す…王の鎧の一部である王パーツには、普通の生物は近付くことすらできない。振動波によって、分子レベルで分解されるのだ。

しかし、そのオウパーツをつけた半月ソルジャーに、フレアは悠然と近付いていた。

振動波で塵になろうと、再び不死鳥のように元に戻るのだ。

「うわぁああ!」

そして、ついに半月ソルジャーのはげかけた頭の天辺に、微笑みを浮かべたフレアの手が伸びた。

一瞬で、丸焦げになる半月ソルジャー。

「あいつ〜!目立ち過ぎだ!」

サーシャは、フレアの隣までダッシュした。

「能力は、できるかぎり使うなと…!?」

フレアが手を離すと、半月ソルジャーはその場で崩れ落ちた。

しかし、その半月ソルジャーの腰にオウパーツがない。

そのことに気付いたサーシャは、周囲を見回したが、怪しいやつはいない。

「…」

フレアは無言で、半月ソルジャーを燃やした手のひらを見つめていた。

「誰が?」

サーシャは、ドラゴンキラーを構えた。

「今は…誰もいないわよ」

サーシャとフレアの後ろまで来た理香子が、言った。

「!」

サーシャは、理香子の顔を見た。

「おそらく、空間能力を使える相手がいる。時間を止めるとかね」

理香子の言葉に、サーシャは目を見開いた。

「やはり…」

理香子はため息をつくと、

「この世界に、何かが起こっているようね」

丸焦げになっている半月ソルジャーを見下ろし、

「まずは…この男から、オウパーツをどうやって、手に入れたのかを聞き出しましょう」

目を細めた。
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