天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
その瞬間、里緒菜は走り出していた。
携帯を取り出し、場合によっては警察に知らせようとしていた。
しかし、里緒菜は、警察に電話をすることはできなかった。
路地裏から出てきた人物を見た瞬間、里緒菜は足を止めた。
「え」
携帯が手から滑り落ち、地面に落ちた。
「うん?」
路地裏から出てきた女も、里緒菜に気付いた。
「如月か」
女は、里緒菜の旧姓を口にして笑いかけた。
「部長」
里緒菜の瞳から、涙が流れた。
「元気そうでなによりだ」
「部長!」
涙で視界がかすれた。
「一体…今まで」
「すまんな」
「部長!」
涙を拭おうとした少しだけ、視線を下に向け…顔を上げた時には、美奈子はいなくなっていた。
「部長!中山部長!」
何度、里緒菜が叫んでも…美奈子が姿を見せることはなかった。
まるで…幻だったみたいに。
ただ…確かにいたことを証明するかのように、僅かな砂が美奈子の立ち止まった場所に残っていたが、涙目の里緒菜に気付けるはずがなかった。
携帯を取り出し、場合によっては警察に知らせようとしていた。
しかし、里緒菜は、警察に電話をすることはできなかった。
路地裏から出てきた人物を見た瞬間、里緒菜は足を止めた。
「え」
携帯が手から滑り落ち、地面に落ちた。
「うん?」
路地裏から出てきた女も、里緒菜に気付いた。
「如月か」
女は、里緒菜の旧姓を口にして笑いかけた。
「部長」
里緒菜の瞳から、涙が流れた。
「元気そうでなによりだ」
「部長!」
涙で視界がかすれた。
「一体…今まで」
「すまんな」
「部長!」
涙を拭おうとした少しだけ、視線を下に向け…顔を上げた時には、美奈子はいなくなっていた。
「部長!中山部長!」
何度、里緒菜が叫んでも…美奈子が姿を見せることはなかった。
まるで…幻だったみたいに。
ただ…確かにいたことを証明するかのように、僅かな砂が美奈子の立ち止まった場所に残っていたが、涙目の里緒菜に気付けるはずがなかった。