天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
部室から出た高坂が向かったのは、屋上だった。
同じ学園であっても、ブルーワールドから見える景色とは違っていた。
どこまでも広がる人工物。
ブルーワールドのように、遠くに魔物が飛んでいることはない。
(まだ…実感はないな。ここが、俺の世界だというな)
屋上を囲む金網に指をかけて、高坂は世界を凝視した。
「ここにいたのね」
突然、後ろから声をかけられたが、高坂は振り返ることをしない。
相手がわかっていたからだ。
「どうだった?何か思い出した?」
高坂の隣に来たのは、さやかだった。
「いや…別に…」
高坂はしばらく、さやかを見ずに、町並みを見つめ続けた。
「…」
さやかは、それ以上何も言わずに、ただ…高坂と同じように、後ろから町並みを見つめた。
「クッ」
軽く下唇を噛んでから、高坂は口を開いた。
「ただの事実確認だ。俺には、兄と妹がいた…。妹は兄に殺された。その兄が、ブルーワールドに恐らく逃げた。だから俺は…ブルーワールドに向かった」
「…」
さやかは、苦しそうな高坂の横顔に目をやった。
「なのに…俺は、ブルーワールドでも、やつを止めれなかった。それに、人殺しをさせない使命感はあるのに…妹を殺されたという実感がない。感情がわかないんだ。いや、怒りはあるのに…妹を殺されたのに!身を引き裂かれる程の憎しみがわいて来ない!」
高坂は金網を握り締め、
「俺は、こんなにも!薄情な人間なのか!」
自分自身への怒りで震えた。
「そ、そんなことは……!」
慰めようとしたさやかは、後ろに気配を感じ、振り返った。
すぐ後ろに、1人の男子生徒が立っていた。
いつのまに近くに来たのか…さやかはまったく、気付かなかった。
「高坂…」
男子生徒の声に、高坂は振り返った。
「中島!?」
「お帰り」
学生の名前が自然と出たことに驚く高坂に、中島は微笑んだ。
「!?」
その笑顔を見ていると、失った過去での学園生活を思い出していくように感じた。
同じ学園であっても、ブルーワールドから見える景色とは違っていた。
どこまでも広がる人工物。
ブルーワールドのように、遠くに魔物が飛んでいることはない。
(まだ…実感はないな。ここが、俺の世界だというな)
屋上を囲む金網に指をかけて、高坂は世界を凝視した。
「ここにいたのね」
突然、後ろから声をかけられたが、高坂は振り返ることをしない。
相手がわかっていたからだ。
「どうだった?何か思い出した?」
高坂の隣に来たのは、さやかだった。
「いや…別に…」
高坂はしばらく、さやかを見ずに、町並みを見つめ続けた。
「…」
さやかは、それ以上何も言わずに、ただ…高坂と同じように、後ろから町並みを見つめた。
「クッ」
軽く下唇を噛んでから、高坂は口を開いた。
「ただの事実確認だ。俺には、兄と妹がいた…。妹は兄に殺された。その兄が、ブルーワールドに恐らく逃げた。だから俺は…ブルーワールドに向かった」
「…」
さやかは、苦しそうな高坂の横顔に目をやった。
「なのに…俺は、ブルーワールドでも、やつを止めれなかった。それに、人殺しをさせない使命感はあるのに…妹を殺されたという実感がない。感情がわかないんだ。いや、怒りはあるのに…妹を殺されたのに!身を引き裂かれる程の憎しみがわいて来ない!」
高坂は金網を握り締め、
「俺は、こんなにも!薄情な人間なのか!」
自分自身への怒りで震えた。
「そ、そんなことは……!」
慰めようとしたさやかは、後ろに気配を感じ、振り返った。
すぐ後ろに、1人の男子生徒が立っていた。
いつのまに近くに来たのか…さやかはまったく、気付かなかった。
「高坂…」
男子生徒の声に、高坂は振り返った。
「中島!?」
「お帰り」
学生の名前が自然と出たことに驚く高坂に、中島は微笑んだ。
「!?」
その笑顔を見ていると、失った過去での学園生活を思い出していくように感じた。