天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「パンドラの箱?」

緑は画面から目を離し、高坂を見た。

高坂は頷き、

「この世界の神話だ。あらゆる災害が詰まった箱。それを開けてしまった為に、世界に災害はばらまかれた。しかし、その箱の最後に入っていたのが、希望だ」

「イヒイヒ〜。それは、希望と呼びますかね」

舞は笑った。

「そうだな。希望ってのは、解釈で変わるし…絶望を回避する為に、本人が希望を見つけたらいい。それは、未来でも…自分の中にある過去の経験でも、希望は絶望しなければ、見つけられる」

「つまりね。最後に希望が残ったら駄目ってこと!そのパンドラって箱を開けさす前に、何とかしなければいけないってことですよね。高坂部長」

「ああ…。絶望の次に、希望じゃない。明らかに、その間に後悔がある。箱を開けた後悔が」

高坂は部員達を見回し、

「おそらく…今、パンドラの箱を開けようとしている者も、いずれ…後悔するはずだ。ただし…」

ここでぐっと拳を握り締めると、

「人ならばな」

吐き捨てるように言った。

「…」

今まで何か考え込み、ずっと無言だったさやかは、高坂の最後の言葉に目を瞑った。

「とにかく、その歌が聴きたい!」

高坂の願いに、

「ダウンロードしましょうか?」

舞はマウスに手を伸ばした。

「いや…こんな機械からでは、すべての音を聞き取れないかもしれない。CDを買うぞ!」

部室を出ようとする高坂に、緑が言った。

「うちら…この世界のお金持ってましたっけ?」

「う!」

高坂は怯んでしまった。

哲也達防衛軍との戦いの時から、いざというときに籠城する為に、ある程度の食料は確保し、二部屋ある内の奥のスペースは居住空間にしていた。

だから、当面の生活には困らないが…。

「我々の目下の敵は…お金という現実」

その場で崩れ落ちた高坂を見て、さやかはため息をつくと、ソファーから立ち上がった。



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