天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「CDを買うよりも、直に声を聴いた方がいいでしょ?」

さやかの手にはいつのまにか…二枚のチケットが握られていた。

「昨日と今日の二公演。あたしと行く?」

さやかは、崩れ落ちている高坂に訊いた。

「喜んで、お供致します」

高坂は元気よく立ち上がると、深々と頭を下げた。

「しかし〜よく手に入りましたね」

舞はマウスを動かし、

「ソールドアウトアウトになっていますよ」

画面を確認した。

「少し気になっていたのよ」

さやかは軽く肩をすくめた後、

「この世界に来たときからね」

手に持ったチケットを見つめた。

「気になっていた?」

頭を上げた高坂は訝しげに、さやかを見た。

「ええ…。実際は、この世界に来る前から」

少し視線を外したさやかに、高坂は眉を寄せ、

「どういうことだ」

「簡単よ。ブルーワールドでも、この曲はかかっていた。だけど、伝わるメッセージは違うみたいだけど…」

さやかは、記憶を探り出した。

「新聞部をやっていると、やはり…流行のファッションや音楽のチェックもかかせない。そんな中で、彼女の歌に出会った」

「!?」

睨むように自分を見るさやかに、高坂は息を飲んだ。

「そんな彼女の歌が…この世界でも流れていた。気になるじゃない」

突然、さやかは笑うと…高坂に背を向けた。

「ここで、ごちゃごちゃ言っても仕方がないわ。彼女に会いに行きましょう」

「待て!」

歩き出したさやかの肩に、高坂は後ろから手をかけた。

「その歌手の謎は、今から考えるが…。そのチケット代は、どこから出た?」

「あら?」

さやかは振り返ると、高坂に妖しく微笑んだ。

「報酬よ」

「報酬?」

「そうよ。理事長に会いに行った時に、この世界の為に働く報酬に関しても、話をしたのよ」

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