天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
営業中よりも明るい光が、店内を照らしていた。
店の扉を開けると最初に飛び込んでくるのは、長いカウンター席。
その左側の奥には、ステージがあり、テーブル席が並んでいた。
「ある意味…本物だったわ」
カウンターに座り、ワイルドターキーの入ったグラスを転がしながら、天城志乃はこたえた。
「ある意味って?」
カウンター内で、煙草をくわえながら聞き返した女の名は、有原里美。普段は、この店を仕切っていた。
「里美先生は、歌手って何だと思いますか?」
グラスをカウンターに置くと、中の氷を見つめながら、志乃は質問した。
「まあ〜自己主張も踏まえて…メッセージを伝える為じゃないの?」
里美は煙草を灰皿に置くと、志乃のふさぎがちな瞳を見つめた。
「そうなんですけども…慈善事業のチャリティーソングでもない限り…まったく個性のない歌ってないと思うんですよ…」
ここまで口にしてから、志乃は自分の考えを否定した。
「いや、違う。あの歌い方はまるで…最後の遺言のような歌だった。己の明日はない。だからこそ…明日ある者に対しての思いやり…それとも、何もできない自分への悔しさ」
志乃は考え込んでしまった。
かつて、喉を壊し…二度と歌えないと宣告されたことがある志乃だからこそ、感じ得たものかもしれなかった。
「つまり…その遺言は」
里美は、志乃の言葉を続けた。
「あたし達…すべてのリスナーに向けられていると」
「そうなんですが…」
「…」
まだしっくりと来ない感じの志乃を見つめながら、里美は煙草を手に取ると、軽く肺の中に煙を吸い込んだ。
そして、煙を吐き出すと、煙草の先からも立ち上る煙に目をやり、
「いろんな歌手はいるわ。そのレダって子にも、いろんな事情が」
「並の歌手なら!」
志乃は突然、カウンターを叩いた。拳をぎゅっと握り締め、
「そんな風に思えるでしょう。あのレダの歌声には、魂をかけた真実があった!だけど、その真実の正体が」
「世界が終わるね」
里美は、煙草を灰皿にねじ込んだ。
店の扉を開けると最初に飛び込んでくるのは、長いカウンター席。
その左側の奥には、ステージがあり、テーブル席が並んでいた。
「ある意味…本物だったわ」
カウンターに座り、ワイルドターキーの入ったグラスを転がしながら、天城志乃はこたえた。
「ある意味って?」
カウンター内で、煙草をくわえながら聞き返した女の名は、有原里美。普段は、この店を仕切っていた。
「里美先生は、歌手って何だと思いますか?」
グラスをカウンターに置くと、中の氷を見つめながら、志乃は質問した。
「まあ〜自己主張も踏まえて…メッセージを伝える為じゃないの?」
里美は煙草を灰皿に置くと、志乃のふさぎがちな瞳を見つめた。
「そうなんですけども…慈善事業のチャリティーソングでもない限り…まったく個性のない歌ってないと思うんですよ…」
ここまで口にしてから、志乃は自分の考えを否定した。
「いや、違う。あの歌い方はまるで…最後の遺言のような歌だった。己の明日はない。だからこそ…明日ある者に対しての思いやり…それとも、何もできない自分への悔しさ」
志乃は考え込んでしまった。
かつて、喉を壊し…二度と歌えないと宣告されたことがある志乃だからこそ、感じ得たものかもしれなかった。
「つまり…その遺言は」
里美は、志乃の言葉を続けた。
「あたし達…すべてのリスナーに向けられていると」
「そうなんですが…」
「…」
まだしっくりと来ない感じの志乃を見つめながら、里美は煙草を手に取ると、軽く肺の中に煙を吸い込んだ。
そして、煙を吐き出すと、煙草の先からも立ち上る煙に目をやり、
「いろんな歌手はいるわ。そのレダって子にも、いろんな事情が」
「並の歌手なら!」
志乃は突然、カウンターを叩いた。拳をぎゅっと握り締め、
「そんな風に思えるでしょう。あのレダの歌声には、魂をかけた真実があった!だけど、その真実の正体が」
「世界が終わるね」
里美は、煙草を灰皿にねじ込んだ。