天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「そ、そうだ!」

突然、和恵は手をポンと叩くと、麗菜の方に体を向け、

「赤星さんって、ここに興味があるってことは〜音楽が好きなんだ!ねぇ!そうでしょ!」

顔を近付けた。

「き、興味がない訳じゃないけど」

たじろぎながらも、麗菜は答えた。

「あたし!ドラムやってるんだ!赤星さんは、何かしてるの?」

興味津々で訊いて来る和恵。

「お、音楽はやっていないけど…演劇は少し…」

顔を逸らしながら、最後はぼそっと呟くように言った麗菜に、和恵は目を丸くして、

「え、演劇!!」

予想外に驚いて見せた。

「え、演劇かあ〜」

体をカウンターの方に戻すと、頬杖をつき、

「里緒菜お姉ちゃんと一緒か」

何やら考え込んだ。

(里緒菜お姉ちゃん!?そうか…如月先輩は、速水先輩の親友だったわ)

麗菜は、心の中で確認した。

「ああ〜音楽に興味があれば…一緒にバンドを組めると思ったのにな」

残念そうに、首を落とす和恵を見て、隣にいた志乃が初めて口を挟んだ。

「そんなに…友達を誘うほど、音楽に興味あるの?昨日だって、退屈そうだったじゃない」

「昨日は!」

思わず強い口調で言いながら、志乃の方を向いたが…顔を見て、一気にテンションを下げ、

「あたしは、音楽をやる方が好きなの…。他人の盛り上がってるコンサートなんて、つまんない」

顔を志乃に向けたまま体を曲げて、カウンターに頬をつけた。

そんな和恵に、顔を見合わせる志乃と里美。

「大体!お姉ちゃんが、ライブ中に変なことを言うから…。この歌は、世界の破滅を歌っているだとか!いろんなことを言うしさ!何か…ずうっとボーカルを睨んでいたし…」

「え!」

和恵の言葉の途中で、麗菜は手にしていたカップをカウンターに置いた。

「世界の崩壊を歌っている?」

「そう〜そんなことを言うんだよ。歌詞にはまったくないのに」

溜め息をついた和恵とは違い、麗菜はカウンターから立ち上がった。


< 79 / 295 >

この作品をシェア

pagetop