天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「大丈夫?」

里奈は、敵にやられたと思って、崩れ落ちている夏希に駆け寄った。

「ああ〜」

嗚咽しながらも、夏希は女子生徒を守る男子生徒を指差し、

「やっぱり!あの2人付き合っていたんだ!」

「知るか!」

いつもの妄想で付き合って、フラレた夏希を心配したことに、里奈は少し腹が立った。

「乙女レッド結城里奈!」

痴漢男は、里奈と夏希の前まで来て、くねる指を突きだし、

「お前にやられて、捕まった恨みは忘れていない!しかしな!」

目をかっと見開き、

「お前のような!いつもパンツを見せて喜んでいる痴女は、我が指で触る価値もないわ!」

「誰が、痴女じゃ!」

里奈の怒りの蹴りが、痴漢男の股間に叩き込まれた。

「む、無念…」

その場で、白目をむいて倒れる痴漢男。

「行くわよ!夏希」

さっさとその場から去ろうとしたが、さらに夏希は泣き崩れていた。

「みんな…付き合っているんだ〜!」

戦闘員から、女子生徒を守る為に戦う男子生徒達。良いところを見せたいのだ。

「そんな訳な」

と言いかけた里奈を、上目遣いでじいっと見つめた夏希は、里奈の手を取り握り締めると、力強く頷いた。

「モオ!」

その手を振り払うと、里奈は1人で歩き出した。

「あたしだって、その気になれば!男の1人や2人!」

「あははは!」

「きゃーっ!」

里奈が角を曲がると、笑い声と悲鳴が廊下にこだましていた。

逃げる女子生徒を、追いかけるのは…怪人モロダシである。

Tシャツを捲し上げ、顔を隠し、下を隠さないという出で立ちの怪人モロダシ。

その姿を見て、里奈は指でこめかみを押さえた。

「まったく…どうして、こんなやつばかりなんだ」

「あははは」

「きゃーっ!」

里奈は女子生徒達が、通り過ぎた後…モロダシの下半身に蹴りを叩き込んだ。

「弱点ががらあきなんだよ」

かっこよく言ってみたが…虚しさが残った。


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