Another World
第一章
「進め!」
鋭い声が響き渡ると同時に,兵士達の乗った生き物が走り出した.
頭には角,四本の指には長い爪,大きく開いた口には鋭い犬歯が光っている.
名は『ヴェノス』.竜の劣勢種族である彼等は,戦車などの兵器と同じように扱われていた.
「やべぇ・・・また来たぞ」
シュミット・ルビンM1889を構えながら翔羅は言った.
「殺せばいい」
冷たい声が隣から聞こえた.来栖は弾を篭めながらヴェノスの群れを見ていた.
「グオオオオオ!!」
人の何倍もの巨体で襲い掛かってくるヴェノス.
彼等はただ殺す事しか頭にない.
「死ね」
翼覇の機関銃三八式が火を吹いた.
「ギャウ!」
「グアッ!」
何匹かのヴェノスと乗っていた兵士が倒れる.
しかし,他のヴェノス達はそれを踏みつけてこちらに向かって来る.
「チッ,止まんねぇか」
もう一発撃とうとしたときだった.
「オオオオオオオオオオン!!」
空気が振動するほど巨大な遠吠え.ヴェノスの動きが止まった.
「よしっ!」
翔羅のカルカノM1938から焼夷弾が発射された.
炎に焼かれていくヴェノスや兵士達の叫び声を聞きながら3人はその場を去った.