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そんなことがあったなんて…。

私は何も知らなかった。

何も知らなかったから、平林くんを軽蔑した。

平林くんの仲間たちを憎んでいた。

あいつらは私をヒマつぶしの道具に使ったから、と彼らを憎んでいた。

「それに、気づいてたんだ。

桃井が俺たちの話を聞いていた時にも」

「えっ?」

「別れて1週間後、教室の廊下で桃井は俺たちの話を聞いていたんだろう?」

そう言われて、私は首を縦に振ってうなずいた。

「違うんだって言いたかった。

俺は桃井を守りたかったから、賭けに参加したんだって言いたかった。

あいつらの目から、桃井をそらしたかったから…」
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