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グイッと私の躰が引っ張られたと思ったら、
「――姫島係長…?」

私は彼の胸の中にいた。

さわやかな香水の香りが鼻をかすめた。

「俺だったら、やめるように説得するよ?

仲間外れにされても、ボコボコに殴られても、なっちゃんを守るためだったらそうするよ?」

真剣な目だった。

いつもはヘラヘラしているかのような軽い目つきなのに。

その目に心臓がドキッと鳴ってしまう私は、気持ちを再確認する。

私は、彼が好きなんだと。

「君のせいで、なっちゃんはどんな思いをしてきたと思っているの?

どんな苦しい思いをしたと思っているの?

賭けの対象にされたえうえに、お金の道具に扱われて、そんなのでなっちゃんが傷つかないと思った?」
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