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声をかけてきたのは、姫島北斗だった。

「何にもないです。

心配なさらないでください」

首を横に振って、彼の前から去ろうとした時だった。

「何かあったら言ってね」

姫島北斗が言った。

私は特に何も返事しなかった。

やっぱり彼は王様じゃなくて、王子様なんだなって思った。

前までの私なら、彼に恋をしていたことだろう。

彼が王子様だからと言う理由で。

でも今は、無理なのかも知れない。

何故なら、あの人への未練が強過ぎるからだ。

人生最大の恋をした、あの人への気持ちが強いから。
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