1107
「…補佐役は、私にやらせてください」

そう言った私に、姫島北斗は不思議そうに目を見開いた。

「まだ何も知らない後輩にやらせるよりも、ベテランの私がやる方がいいと思うんです」

その瞬間、私は気づいた。

私は、この男に恋をしたんだと。

この男に、恋をし始めているんだと。

「さっきの補佐役を変えると言う話は、取り消してください。

私が姫島係長の補佐になります。

お願いします」

私は頭を下げた。

また逃げたら、私はまた同じことを繰り返す。

あの人と同じことをする。
< 52 / 127 >

この作品をシェア

pagetop