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「もしもし?」

何も知らない母親の声が、今は憎くて仕方がない。

こんなヤツと私を会わせようとしてたのかと思うと、腹が立ってきた。

「お見合いのことなんだけどね」

「なかなかええ人やったやろ?」

そう聞いてきた母親に、
「断ってちょうだい!」

叫ぶように私は言った。

「断ってって、平林さんものすごいええ人やよ?

有名IT企業の社員さんやし、男前やで。

お金も顔も、あんたが望んでるもんが全てそろってるんやで?」

そんなものを望んでいないければ、望んだ覚えもない。
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