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パシン!

それを振り払ったのは、
「陣内さん?」

あの人だった。

「嫌がっているのがわからないのか?」

あの人はそう言って、鋭い眼光をたたえた漆黒の瞳を平林くんに向けた。

「陣内さん、何なんですか?」

訳がわからないと言うように、平林くんは陣内さんに聞いた。

「俺は彼女を助けたまでだ。

用がないならさっさと帰ってくれるか?」

陣内さんににらまれた平林くんは何も言い返せない様子だ。

平林くんは黙って私たちの前を去って行った。
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