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平林くんの後ろ姿を見送った後、
「藤堂、少しの間だけ席を外してくれるか?」

陣内さんの命令に藤堂さんは首を縦に振ってうなずくと、その場を去って行った。

あの人と2人きりになった。

そう言えば、初めて会った時も2人きりだったっけ。

藤堂さんもいたけれど、結局は2人きりだった。

「あいつか?」

藤堂さんがいなくなると、陣内さんが聞いた。

「お前を賭けの道具にした男は」

そう言った陣内さんに、
「――はい…」

私は首を縦に振ってうなずいた。
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