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姫島係長は、いつも私に手を差し伸べていたのに。

力になってあげたいと言うように、手を貸そうとしていた。

でも私はそれに気づかなかった。

いや、気づかなかったんじゃない。

正確に言うならば、手を払っていた。

大丈夫だって笑って、ウソついていた。

迷惑になりたくない。

心配して欲しくない。

私のために、頑張らないで欲しい。

そんな理由で、私は手を借りようとしなかった。

姫島係長は私の力になろうとしてくれたのに、私は彼のその手を払った。
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