world LOST world
それでも、俺と居るときはいつも笑っていた。
骨と皮しかない腕にはいつも点滴がついていて時々、点滴の袋の色が変わるとまた悪くなったのか、と胸が痛くなる。
それでも、美鈴は笑っていた。
それでいい。
それだけで、俺は幸せだった。
「聞いてくれよ。店長、昨日プロポーズされたんだとよ」
出来るだけ、美鈴が笑えるような明るい話を選んで話す。
「でも、実は店長、他に好きな人がいるらしくてプロポーズ断ったんだって、あの歳で青春とか、うけるよな」
美鈴はただ、笑うだけ。
それだけでよかったんだ。
それ以上なんて求めてない。
美鈴が笑っていればそれでいい。