world LOST world
病院に入り勢いよく階段を駆け上がる。
そして、302号室のドアを開けた。
「美鈴!!」
そこには、ベッドに眠る美鈴に抱きつきながら泣いている美鈴のお母さんとその後ろに静かに涙を流すおじさんがいた。
「星夜くん…」
俺の姿に気づいた美鈴のお母さんは俺の手を引く。
「もうね、ほとんど意識がないの。でも、もうすぐあなたが来るからって声かけててね…あなたを待ってたわ」
「何か言ってあげてちょうだい」
美鈴のお母さんはそう言って美鈴の傍から一歩離れる。
俺は美鈴の手を取った。
まだ少しだけ暖かい手に
俺の涙が落ちる。
「美鈴…来たぞ」
話しかけるがいつもみたいな反応はない。
「お前はいつまで寝てんだよ。俺が来てる時ぐらい…起きろよ…な」
いつもみたいに笑ってはくれない。
ただ、人形のように。
ただ、置かれているように。
人でなく、物になってしまった気がした。