手をつなごう
こんなにも千冬を悩ます彼とはどんな人なんだろう。


珍しく缶ビールを開けて煙草に火をつけた。


音楽の音で携帯の着信にすぐに気付かない。


あわてて携帯を取る。


「はい?」


こんな時間にかけていいのは仲のいい友達くらいである。


「俺。有紀ちゃんなかなか連絡くれないからかけちゃった。」


すっかり忘れていた。


「どうせ忘れてたんだ?ひどいなぁ。」


相変わらず爽やかな声である。


「千冬の事って何が知りたいの?」


千冬の事なら何でも知っている。


「いや・・・実はさ。」


嫌な予感がした。


「千冬ちゃんも俺との事は割り切ってると思ってたんだけど。」


遠回しに言ったって事実は一つ。


「遊び?」


ふぅーっと煙草の煙を吐くと続けた。


「だったらもう手引きなよ。それくらい私が言わなくても分かるでしょ。」


「ゴメン。こんな夜中に。」


千冬の悲しむ顔が浮かんだ。


早く解決するのがいいとおもった。


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