手をつなごう
仕事中はプライベートを持ち込まない。


だけど千冬の事が頭から離れなかった。


失恋したってこんなに憂鬱になった事などない。


‐今日夜会えない?


珍しく自分から誘ってみた。


こんな時に頼れるのは啓之しかいない。


なんだか仕事も中途半端な気がしてため息が何度も出た。


居酒屋に入ると啓之が手を上げた。


「千冬がご立腹だぞ。」


椅子に座るより先に啓之が話し出す。


やっぱり千冬も啓之に相談したのか。


「例の大学生の事だろ?まぁ有紀の気持ちも分かるけどな。」


「千冬・・・彼の事そんなに好きだったんだね。」


「まぁ時間が経てば気付くんじゃないか?今は見守ってやれよ。」


千冬にあんな風に言われては見守る自信がない。


「そういやお前らが喧嘩するなんて何年ぶりだ。」


そう言うと啓之はニッと歯を出した。


確かに昔1度だけ喧嘩をした。


当時千冬が恋していたサークルの先輩と有紀が仲良くなってしまったのだ。


もちろん千冬の為に情報を集めようとしてした事だ。


あの時は有紀なんか友達じゃないと言われた。


千冬が誤解だと気付くまで一週間一言も話さなかった。


今回も時間がかかりそうだな。


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