手をつなごう
あれから何時か千冬にメールしたが1度も返ってこない。


だからと言って電話する勇気はない。


また突き放されるのが怖い。


しかし千冬と雄太が会っていない事はなんとなく分かっていた。


「え~こちら雄太です。」


雄太のおちゃらけ具合はとても新鮮だ。


女扱いしないと言うか、女を求めていないあたりがいい。


「ホント有紀ちゃんって男友達みたいだな。」


これが雄太の口癖だ。


有紀の方も徐々に心を開きいつの間にか仲良くなっていた。


「有紀ちゃんこの間言ってたCD貸してよ。」


「いいよ、じゃ取りに来て。」


そんな約束も果たされる事はないのに。


だがそれはそれでいい。


別に何かを期待しているわけじゃない。


仕事ばかりの毎日に少しだけ気を落ち着かせられる時間が出来たのだ。


いつの間にか夏は過ぎようとしていた。


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