手をつなごう
「どうせ他に女が出来たんだろ。」


啓之の言う事はほとんど当たっている。


仕事が忙しくて会えなかったのは私の方なのだ。


「有紀はかわいいんだから!もう少し甘えてみるとかさ!」


千冬は優しい。


同じく教免を持っているが次の採用試験までと今は勉強中だ。


「有紀が甘えてる姿って想像出来ないな。」


「もぉうるさいな。」


ニヤニヤしてる啓之の足をテーブルの下から蹴った。


「で、千冬はどうなの?」


無理矢理千冬の話題に切り替える。


「うん・・・実は今好きになりそうな人がいて。」


啓之も思わず身を乗り出す。


「うそっ、何してる人!?いつの間に出会ったわけ!?」


千冬の気になる彼は大学生。


近所のコンビニで何度か顔を合わせたのがきっかけらしい。


ナンパだと騒ぐ2人に千冬はうなずいた。


その大学生と身体の関係がある事をカミングアウトしたのは少し経ってからだ。


「えっ!?」


居酒屋の個室に2人の声が響く。


「千冬?!何言ってんの?付き合う前にしちゃったの?」


「千冬もやるなぁ。」


「ちょっと啓之感心してる場合じゃないでしょ。」


有紀は脳天気な事を言う啓之を睨みつける。


「私本気で好きになりそうなんだ。」


目をキラキラさせる千冬の隣りに移動してヨシっと肩を抱いた。


「でも千冬、気をつけなよ。」


「うん。分かってる。私もバカじゃないよ。」


「こっちも遊ぶくらいの勢いで行くさぁ。」


再び乾杯して3人の健闘を誓い合った。


テンションは最高潮だ。


「そうだ!彼も呼んでみようよ。」


突出に出た言葉に啓之もそうだそうだと乗り気だ。


千冬は無理だと言いながらもバックから携帯を取り出した。



3人共完全に酔っ払いである。


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