手をつなごう
「もしもし?私。今友達と飲んでて・・・」


有紀も啓之も聞き耳を立てて電話の向こうの声を探っている。


私達の事はもう話してあるらしい。


楽しそうに話す千冬を見て少しだけ安心した。


「有紀と話してみる?」


突然目の前に差し出された携帯に酔った勢いで話しかける。


「コンバンワ。千冬の友達の有紀です。」


「あっ有紀ちゃんコンバンワ。いつも話しに聞いてまーす!」


ノリの良い今時の男の子が想像される。


「千冬がお世話になっております。」


何を言っているんだ。


酔いが回ってよく分からない言葉が出る。


「今からおいでよ。」


こんな酔っ払いの中に加わりたい人がいるはずがない。


「せっかくだし、来なよ。ねっ。」


さんざん誘ったがその日彼が来る事はなかった。


そして有紀と千冬と啓之が3人集まったのはこの日が最後となった。



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