手をつなごう
電話が鳴ったのはそれから2・3日経った日の夜だ。


「もしもし、これって有紀ちゃんの携帯だよね?」


聞き覚えのある声だ。


「・・・千冬の・・・?」


`千冬の好きな人'と言いそうになって思わず口ごもる。


「当たりぃ!よく分かったね。」


「何で番号???」


あの日千冬の携帯の充電がなくなったので有紀の携帯からかけた事を説明された。


そう言えばそんな記憶もある。


「で?どうしたの?」


「千冬ちゃんがあの日から少し冷たいんだよな。」


千冬の作戦なんだろうと心の中でうなづいた。


「で、千冬の事どうなの?」


「どうって千冬ちゃんは優しいし、イイ友達だよー。」


友達?イイ友達ってどういう友達の事を言うんだろう。


悪気がなさそうにさらっと答える。


いや少なくとも、悪気があったら私に探りを入れたりはしないだろう。


でもイイ友達だなんて聞いたら千冬は傷付くだろう。


「有紀ちゃんは彼氏いるの?」


「いるよ。」


こんなところで意地をはってもしょうがないが・・・。


とにかく千冬に悪い気がしてさっさと電話を切る必要があった。


これから用事があると早々に電話を切った。


恋人のいない女が出掛ける訳もなく、テレビの電源を付けて日課のストレッチを始めた。


千冬の事気にしてるのだろう。


その時の有紀は彼が人生を大きく変える存在になるなんて想像も付かなかった。


遠くで花火の上がる音が聞こえて空しくなった。


今年も夏が過ぎちゃうよ・・・。



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