手をつなごう
次の朝思わぬ電話で起こされた。


・・・9時30分。片目を開けて時計を見る。


アパレル業界は朝が割とゆっくりである。


「はい。」


どんなに眠かろうが営業用のキリっとした声で答える。


上司やスタッフからかかってくる事がよくある。


「オハヨウ!有紀ちゃん今日仕事?」


千冬の恋の相手だ。


朝からなんて爽やかな声だろう。


電話の奥から車に乗ってるであろう音が聞こえる。


「何?今から仕事だから。」


「うん。俺も今から学校。夜時間ある?」


一体何を考えてこんな朝っぱらから電話をかけてくるのだろう。


「夜って・・・夜も仕事なんだ。」


冷たく言ったが彼には伝わっていないようだ。


「じゃ終わったら教えてよ。」


強引に押し切られる形で約束をした。


千冬の事で相談があると言われては仕方がない。


さっとシャワーを浴びてから仕事に向かった。


太陽が容赦なく照り付けていて蒸し暑い。


こんな日はお店が忙しくなる。



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