”ただ、愛されたかった…”
 「オーナー、すみません、早退していいですか?」

 シャンプーしてても、頭が割れそうに痛い…。

 後、1時間我慢すれば、仕事が終わる。

 でも、その1時間が我慢できなかった…。

 「篠崎さん(瑠理の事)顔色悪いから、すぐ帰った方がいいね。

 お大事に。」

 オーナーの言葉は、嬉しかった。普段、人に甘えないから、

 優しい言葉にも慣れてない。

 普通の言葉かもしれないけど、瑠理の心には、響いた…。

 
 
 今日は、弟が久しぶりに帰って来る日でもあった。

 歳は、瑠理より1歳下。

 電気関係の仕事をしていて、会社の寮に入っていた。


 「ただいま…。」

 弟は、もう帰って来ていた。

 瑠理は、体温計を探し、熱を測った。38度を少し超えてる…。

 「お母さん、私、熱がある!」

 「水枕作って、冷やしときなさい。」

 それだけだった…。早退してきた事にも、触れてくれない…。

 弟の夕食の準備に、母は、忙しかった…。

 ”多分、今日は、ご馳走が並ぶのだろう…いつもの事だ…。

 なにかにつけて、弟には優しい…。”

 美樹は、デートに出かけていなかった。


 3人で、食卓を囲んだ。母は、嬉しそうだ…。

 弟の仕事の話とかを、一生懸命聞いてる…。

 ”私の話は、聞いてくれそうもない…。私は、いつも聞き役だ…”

 
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