”ただ、愛されたかった…”
 「なんで、駄目なの!私、どうしてもオーディション行きたいの!わかってよ!」

 瑠理は、もう一度、母親と話し合っていた。

 オーディションは、二週間後。

 場所は、東京の青山スタジオだった。

 母親にどうしても、了解して欲しかった。

 母親が、一生懸命働いて、瑠理達を育ててくれたから…。


 だから、母親の了解を貰いたかった…。


 スッキリした気持ちでオーディションに、望みたかった。



 「あんた、歌手になりたいと言いながら、彼氏とチャラチャラしてるよね。」

 母親が、嫌味っぽくそう言った。


 「…。」

 瑠理は、この言葉には、返事ができなかった…。

 ちょうど、彼氏の事で、いろいろ悩んでもいた…。

 
 母親は、瑠理が学と付き合ってる事に、多分反対だった。


 はっきりは、言わないが…そういうのは、わかる…。





 「最初で、最後。一度だけ、チャンスをあげてもいいわ。その代わり、合格

 しなかったら、きっぱり諦めること。それなら、いいけど。」


 母親は、瑠理のオーディションに、条件をつけた。




 「…うん…。わかった…それでいいよ。」


 少し、返事をするのに、躊躇した。


 …瑠理は、母親の条件を、呑んだ。

 
 
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