”ただ、愛されたかった…”
 「夏美、待った?ちょっと遅れた、ごめん。」

 瑠理は、笑いながら、夏美に言った。

 二人は、地下街で待ち合わせをしていた。



 「近くのお店でいい?」

 「うん。」

 二人は、ランチを食べにお店に入った。

 「私は、梅風味のチャーハンにする。瑠理は?」

 「ハンバーグ定食!」

 瑠理は、迷わずそう答えた。

 「ガッチリいきますね。」

 夏美が、笑って言う。

 「だって、お腹空いてるんだもん!」

 二人は、笑い合った。



 
 「私、オーディション受けに行くよ!」

 瑠理が、夏美に報告した。


 「…本気なんだね。難しいと思うよ。そんなに、大切なの?歌手になる事。」

 夏美が、真剣な顔で瑠理に聞いた。



 「うん。本気。今まで生きてきた中で、一番本気。私にとって、すごく大切

 な事なの。それに、もしかしたら、受かるかも?そんな気もしてるの。」

 瑠理も真剣に答えた。


 「すごい自信だな~。どっからその自信は、くるかな~?」

 夏美は、今度は、笑いながら言った。


 「自信?自信あるよ。理由は、ないけど、自信はあるの。説明できないけど、

 とにかく、やってみる!」

 瑠理は、そう言い切った。



 「なんか、瑠理の話し聞いてたら、本当に合格するような気がしてきた。

 頑張れ!」

 
 
 夏美のその言葉が、嬉しかった。


 でも、母親とした約束は、夏美には、黙っていた。

 勢いで、約束してしまった…。



 もし、合格できなかったら…考えると怖かった。

 
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