”ただ、愛されたかった…”
 家の近所に、焼肉屋があった。

 ゆかりや沙織ともよく行ったりしていた。

 お店の人も、食べに来るお客さんも、みんな顔見知りの人ばかりだった。


 その日は、母親と一緒に行った。

 窓際の外が見えるテーブルに座っていた。

 

 「瑠理ちゃん、いくら歌が好きでも、プロにはなれないんだから、

 はやく結婚した方がいいよ!」

 他のテーブルの知り合いのおじさんが、瑠理にそう言った。


 「…。」

 瑠理は、その話しには答えず、カルビーを食べていた。



 「違うよ!この子はね、プロになれたかもしれないんだよ!

 オーディション合格してたんだから!」

 
 瑠理の母親が、言った……。


   「嘘………。」

 瑠理は、そう言って…トイレに……。


 ”私、合格していた………”


 トイレの外では、母親とおじさんの声が、聞こえていた……。




 ”瑠理の仲で…何かが…壊れた……。”
 

 
 母親が、合格通知を、破って捨てたらしい……。


 合格通知を自分の目で、見たかった………。



 オーディションが終わってから…もう…

 3年の月日が、流れていた……。
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