”ただ、愛されたかった…”
 瑠理が、子供の頃、母親と一緒に、

 海岸沿いを、歩いていた。

何故か、この時の情景、心の動き…を、瑠理は、ずっと覚えている…。


 まだ、3、4歳の頃の事なのに、頭の中にはっきりと浮かぶ。


 瑠理は、母親に手を繋いで貰っている。


 母親の背中には、弟が、おんぶされてる…。


 弟は、子供らしい子供だったから、おんぶだの抱っこだのずっと

 ぐずっている…。


 その状況を、3、4歳の瑠理は、ずっと見ている。



 母親の辛そうな顔…、なんか優しい言葉を


 掛けてあげたくて、瑠理は、一生懸命考える。


 でも、3、4歳の瑠理には、何て言ったらいいか判らない…。


 思わず、口から出た言葉は



「お母さん…えらいね(疲れたね)」


 瑠理は、その時の自分の気持ちを、覚えてる。


 母親を、気づかってでた言葉…。


 ぴったりな言葉が見つからなくて、

 ”えらいね”と言ってしまった。


 「瑠理ちゃん、頑張ろうね、お母さんも頑張るから。」

 母親は、瑠理が、疲れてきたのだと思い、そう言う。


 ちょっと違うけど、

 「うん…。」

 瑠理は、頷く……。


 
 瑠理の小さな頃…


 母親は、いつも辛そうだったんだ。


 だから、瑠理は、母親の一番の協力者でいたかった……。


 歯車が狂い、憎んだ事も……いっぱい…ある…。



 でも…あの人は………瑠理の母親なんだ!
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