”ただ、愛されたかった…”

 帰って来てから、母は、住み込みでの生活

 の事、先生の事、その話に関しては、

 何も、触れてこなかった。

 瑠理も、その事に関して、母の前では

 触れなかった。

 沙織や、ゆかり達の前では、お店を辞める時

 の先生とのやり取りを、よく話した。

 いつも、少し大袈裟に…。

 でも、先生との生活の話は、あまりしなかった。

 住み込みでの生活は、なんか惨めっぽくて、

 友達の前では、あまり話したくなかった。

 

 惨めな事、哀れな事、そういう事は、

 できるだけ避けたかった。

 
 
 
 気づかない様に生きていた。
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