ゴシップ・ガーデン

「でももう見頃じゃないでしょう？」

教頭は小首を傾げた。



「…別に。
見頃だけが見頃じゃないですから。

…花が咲く前から
ずっと見てるんで」


「…なるほど。
バラが好きなんですね」


「はい。えっと、
…い、家でも育ててるんで。
…参考にしてるんです、
ここのバラを」



嘘は言ってない。

けど、ちょっと
取って付けた様な言い訳だったかな。


ヒオカ先生とのこと、
疑われたらヤバい。


ヒオカ先生いなくて
ホントよかった。




教頭と顔を見合わした校長が、
言いにくそうに首をかいて
苦笑いした。


「そうでしたか。
…それは残念なことをしましたね」


「え？」


「夏休みにこの校舎を
取り壊すでしょう？」



嫌な予感が全身を貫いた。


校長は、哀れみをこめた表情で、
あたしとバラを交互に見た。


「…この花壇も
埋め立てることになったんですよ」


「嘘…」



５人の男たちは
苦々しく笑いを含んだ表情で、
お互いに目配せしながら、

茫然としたあたしの顔に
視線を走らせた。



ちょっと待ってよ。

冗談でしょ？


「嘘、だって…、
校舎は取り壊しても
花壇は残るって…」



「ええ。当初はそのつもり
だったんですが…。

次に建てる駐輪場の広さの関係で、
花壇も埋め立てることに
なってしまったんです」