ゴシップ・ガーデン
申し訳なさそうな顔しながら、
校長は淡々と語る。


埋め立てる?

信じられない。



ヒオカ先生は、
このこと知ってるの?



「…そんな…。
じゃあ、ここのたくさんの
バラたちはどうなるんですか?」


「残念ですが…」



「校長先生、
ここのバラが一面咲いたの
見たことあるんですか?」


見てたらそんな残酷なこと
絶対言えるはずない。

そう思ったけど、



「ええ。見事でした。
ですが、もう決まったことですから」


それでも無慈悲な人間はいるんだ。

抑揚のない、反論を許さない、
そんな声色。




「それでも何とか
残してもらえませんか?
お願いします!」


懇願して
頭を腰から思いっきり下げた。



業者は面倒臭さそうに
顔を見合わせた。


校長はため息をついた。


「残念ですが、
もう決まったことですから」


痛々しいものを見るような目で、
壊れたプレイヤーみたいに
同じ台詞を繰り返すだけ。



「ヒドイ…」


あたしは歯を食いしばって
バラを見下ろした。



ヒオカ先生…。



あたしは
5人の大人に会釈すらせず、
その場を走り去った。





職員室に行って、
ヒオカ先生はいなくて、
化学室に走る。


扉の小窓から化学室を覗くと、
化学部が実験中だった。

ヒオカ先生は見当たらない。


どこいるのよ。

イライラしながら、廊下を走る。



「!!ヒオカ先生!!」


階段に差しかかったところで、
上がってくるヒオカ先生と
ようやく遭遇した。



「どうしかした?」


ヒオカ先生は、
あたしの表情に驚いた顔をして、
段ボールに入った教材を
持ち直した。


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