ゴシップ・ガーデン
あたしが誘わなくても
元々今日も一人でも
植え替えるつもりだった。

準備万端のヒオカ先生。


あたしはうれしかった。


あたしが
ずっと見てきたヒオカ先生は、

思ってた通り、
気持ちを込めてここのバラに
向き合ってきてた。



「けど、佐野さんのがスゴイ。
俺が考えてたより規模が大きい。
すごく」


ヒオカ先生は振り返って
肩をすくませて笑った。

すごく自然な無邪気な笑い方。



不用意に、ときめいて、
一瞬息も忘れた。




「根を崩さないように掘り起こして、
植え替えたら強剪定して
負担を最低限に抑える。

花はしばらく咲かせないように」


バラのプロ錦織先生は、
そう言って
慎重に掘り起こしていく。


次の春も、
今年程に満開のバラを
見ることはできない。

それでも…。




いつの間にか、
空は突き抜けるような快晴。


蝉の鳴き声。



汗を拭いながら
土にまみれて作業する
ヒオカ先生の真剣な横顔。


ひたむきな熱い瞳。


半袖のTシャツから、
すっと長い腕。

薄く日に焼けて、
動かすたびに筋肉の筋が
浮き上がる。



一挙一動、
あたしはバカみたいに
目を離せないでいた。



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