ゴシップ・ガーデン
「え?」


あたしとヒオカ先生は
同時に聞き返した。


「私今ね、園芸部の顧問やってんの。

でね、佐野さんがくれた
ここのバラの写真、
うちの部員たちにも見せたら、

是非とも自分たちも
育てたいって言うもんだから」


しょうがない、って口調だけど、
部員たちを誇らしげに目を細めて、
付け加えた。


「うちの高校、田舎の方だから
土地はまだ空いてるのよ」



横にいるヒオカ先生の
パッと明るくなった顔色が、

あたしの目に飛び込んできて、
思わずヒオカ先生を見上げた。


成り行きで
目が合って見つめてしまった。



「私ね、うちの高校には、
バラ植えてないのよ」


錦織先生の声に、顔を向ける。

「え、…どうして」


「今は野菜を育ててるの。
収穫して、時期が終われば
それで終わる。

バラは手入れが大変だったでしょ。
上手く育てれば長く生きてくれる。

だからヒオカくんには
悪いことしたなって、
ずっと思ってた。

異動することになって、
たくさん植えたバラを
押し付けたカタチになったこと

無責任だったな、って」



「…いえ、そんな…」

ヒオカ先生は
控えめに一往復首を横に振った。


「私はもうすぐ定年だから。
今度も育て続けることに
責任を持ち続けられない。

だから新しい学校では、
自分からバラは植えてなかったの」


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