ゴシップ・ガーデン
植え替えの負担を
最小限にするために、

新しい場所に植えられたバラは
大掛かりに剪定されて、
すごく小さくなってしまった。



「ちゃんと根付くか、
これからが勝負だ」


ヒオカ先生は
不安げな表情だったけど、
目はイキイキしている。



「きっと大丈夫だよ」


口先だけじゃなく、
あたしは本当に信じてるよ。


「ありがとう」


「ううん、あたしちっとも
役に立ってないし」



「そんなことないよ。
佐野さんがいたから
ここまでできたんだ。

本当にありがとう」


目をしっかり見つめて
お礼を言われたから、

恥ずかしいのか、泣きたいのか、
妙な気持ちになって

あたしはヒオカ先生の首らへんに
目線を下げた。


二人になって、
急に緊張しはじめちゃった。


ヒオカ先生の笑った口元が見える。




新しいバラの花壇は、
人目の多い場所。


これからはたくさんの人が
称賛してくれるよ。

うれしくて、とても寂しい。



図書館は校門にも近い。


夏休みだって勉強に来てる生徒は
出入りしてるし、

部活に行き来する生徒たちも
前を横を通る。



「そんじゃ、あたしも帰るね!」


早足で去りながら
振り返って手を上げた。


ヒオカ先生も手を挙げて
あたしを見送ってくれた。


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