ゴシップ・ガーデン
皆がバラを思って作業してた間、
あたし一人が不純だった。


ずっと、浮足立ってた。


ヒオカ先生と
もっと一緒にいたかった。


作業が終わらなければいいと思った。



だけど、
バラはすべて植え替え終わったし、

旧校舎も解体のための足場を
組み立て始めたし、

あたしは夏休みの受験勉強の
スタートダッシュに出遅れた。



戻らなければならない。


楽園なんてない、もとの場所に。



早足のペースを落として
まだ明るく澄んだ日暮れの空を
仰いだ。


深く息を吐いて、
やっぱり泣きたかったんだって
気づいた。



顔がヒリヒリする。

母に「日焼けなんかして」って
いちいち文句言われるだろうな。




ヒオカ先生のこと、
やっぱ好きだなぁ…。


噴き出すように再燃していく。

“片想い”。



薄く笑みを浮かべて、
にじみそうになった涙を
こらえた。






『この女の人ってさ…』


この前、
千夏姉の新居に遊びに行ったとき。


千夏姉に見せてもらった
結婚パーティーの写真を
指差して聞いた。



ヒオカ先生のことを
修ちゃん、って呼んでいた、

一際目を引く
あの可愛い女の人のことを。


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