ゴシップ・ガーデン
ふいに
廊下に人が通る気配がした。



お互いの顔に緊張感が走った。



身を引いたとき
肩にかけたタオルが落ちた。


拾い上げることも出来ずに、
息をひそめるようにして、

人が通り過ぎるのを確認する。



さっきとは様相の違う無言。



気まずい時間って
長く感じるなぁ…。



ひっそりしてて、
情けなくて、

気持ちがどんどん
投げやりになっていく。



人が通り過ぎて、
緊張の空気がとけたから、

あたしは冗談っぽく
口をひらいた。


「見つかったらヤバい。
そんな顔してる」



「…え、…いや…」

口ごもるヒオカ先生。



「“先生”だもんねぇ〜」


冗談で返せない、
ほんと、もっともな反応する人
だなぁ〜…。



悲しいのか可笑しいのか
自分でもわからないけど、
笑えた。




教師と生徒の関係って、儚い。


思ってたより、ずっと儚い。





あの元カノと会ってたときとは
まるで違う。


あの女の人とは、
街中で人目なんて気にせず
堂々と手を挙げてたじゃない。


…当たり前なんだけどさ。


< 130 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop