ゴシップ・ガーデン

『ああ、そうだよ。
そうなんだけどな…。
詳しいことは、会って話すよ。

シイナに少しでも、
本当のお父さんに
会いたい気持ちがあるなら…』


控えめの声ながら、
父は引き下がらない。



「やめてよ！！
会わないし、
会いたくなんてないってば！！」


“本当のお父さん”って何よ。

あたしには、そんなものいない。


話もきちんと聞かずに
あたしは一方的に電話を切った。



「…どうかした？」

心配したヒオカ先生の声が
右耳に入ってきた。



「…ううん、何でもない」


あたしはヒオカ先生を見ずに、
そのまま黙って、

どこという訳でもない、
ただ目の前を見つめ続けた。





その日の夜も、次の日も、
父から連絡が入っていた。





一体、何だというの。


腹立つ気持ちがほとんどで、

あとほんのちょっとだけ、
何なんだろう、って
気にもなっていたけど、


あたしは父からの電話に
一度も出なかった。





“あの人”とは、
もう二度と会わないって
言ったんだから。



ううん、会えないって、
生まれる前から
決まってんだから。


例外は、
あの一日だけなんだから。