ゴシップ・ガーデン

立ち尽くしたまま、
動けなかった。


絶句した。


知らなかった。



じゃあ、母は今、
どこにいるというの？



そういや、
最近どうだったっけ？


飲んで帰ってきたとき、
どうだったっけ？


彼氏のタバコの残り香してたっけ？


思い出せない上、
考えもまとまらなかった。



ケータイ片手に
ベランダに出て
外を見てみたり、

所在なげにウロウロして、

とにかく落ち着かなきゃ、
自分に言い聞かせて、
ソファーに浅く腰掛けた。




突然電話が鳴った。



音量は同じはずなのに、
さっきより大きく感じて、

飛び上がるくらいビックリした。



電話に出たら、
もっとビックリして
心臓が止まるかと思った。



『佐野様のお宅でしょうか？』


受話器から
機械的に丁寧な女の人の声が
聞こえる。



『こちら、○○病院でございます』


「びよういん？」




『お母様が、
事故に遭われまして…』




抑揚のない流れるような
病院職員の女の声に、
言葉の意味を理解するまで
時間がかかった。