ゴシップ・ガーデン

『恨まれてても、
しょうがないと思う。


無責任になるが、知らなかった。

妻が、君のお母さんに何をしたのか。

突然、君のお母さんは、
私から姿を消した。

君を身ごもっていたことも、
彼女が姿を消すまで知らなかった。

何度も連絡を取ろうとしたけど、
彼女は応じてはくれなかった。


君のお母さんは、
私からの援助を一切受け取らなかった。

何を言っても、
言い訳にしかならいけど、

それでも、私のできる限りの
償いはしていきたいと
ずっと思っていたんだ』



エコーがかかったような声が、
ずっと頭の中でこだましていた。


実の父親だという、その人が、
あたしに言った言葉。



意識から離したいのに、
どうしても離れない。


あたしは頭を振って、
必死にその声を振り払おうとした。





「佐野さん」


声に振り返ったら、
ヒオカ先生が歩いてきた。

日差しに目を細める。


「暑いよ。日陰に入った方がいい」


目の前がフッと暗くなった。


ヒオカ先生が日を遮るように
あたしの横に立ったから。

優しいな。



「行かなくていいの？」


ヒオカ先生は唐突に言った。



「行くってどこに？」


なんとなく
ヒオカ先生が言いたいことは
わかったけど、
あたしはとぼけて聞き返した。


ヒオカ先生は、
少しためらいながら口を開いた。


「…お父さんの、お葬式」