ゴシップ・ガーデン
「“お金が欲しい”
そう、あの人に言ったの」



償いたいと言った、
実の父親に対して
あたしが言った言葉。



あの人は、
すぐにあたしの口座に振り込んだ。


あたしが言った通りの額を
(あの人は、『もっと払いたい』
という意思を見せてきたけど、
必要以上の振り込みは拒否した)。



とにかく、どうしても、
ここから出ていきたかった。



転校して、
千早みたいな友だちも出来なくて、
母は新しい彼氏に夢中だし、
それが原因で、嫌な噂話されるし。


あたしはとにかく
ここから出て行きたかった。


だからどうしても
お金が必要だった。



大学に行くお金。



だから、大学4年間の授業料を
あの人から貰った。



バイトもするし、
奨学金ももらうつもりだし、

でも、母には頼らず、
誰かの援助なしには一人で
進学できるとは思わなかった。



あたしはどうしても大学に行って、
資格とって、

誰にも頼らず
生きていけるようになりたかった。



だから、ちょうどいいと思った。

この人に出させればいいじゃん、
って。




「最低でしょ、あたし…」


あたしは再び
ヒオカ先生に背を向けた。


自分がすごく
浅ましい人間に思えてきて、

吐露したことを
言ったそばから後悔して
口をつぐんだ。




「…なんだ、そんなの、
最低なんかじゃないよ」


ヒオカ先生の優しい声が
あたしの胸に甘く鋭く刺さった。


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