ゴシップ・ガーデン
黙ったままのあたしの背中に、
ヒオカ先生は語りかけてくる。


「後悔してるなら…、
思うことがあるなら、
言った方がいいと思うよ。
本人の前で」



「あたしが言いたいことなんて、
知らないくせに!」

思わず、感情的になった。


「あたしが、
あの人に言いたいことなんて、
この期に及んで、
感謝の言葉じゃなくて、
もしかしたら恨み言かもしれないよ?

それで、遺族が
嫌な思いするかもしれないよ?
それでも
行った方がいいっていうの?」



睨むように
ヒオカ先生を見上げる。


見上げて、思わず息をのんだ。



「それでも、
佐野さんの気が済むほうが大事だ」


怯んでしまうくらい強い目だった。




ヒオカ先生は、
強くあたしの手を握った。


「え」っていう暇もなく、

ヒオカ先生は
そのまま強引に
あたしの手を引いて走り出した。


引っ張られながら
あたしも走った。



「ヒオカ先生、どこ行くの?!」


状況が把握できなくて
あたしは走りながら
ヒオカ先生の背中に向かって
叫んだ。



「車!」

ヒオカ先生は
振り返らずに答えた。



あたしは周囲を意識した。

夏休みで少ないけど生徒はいる。


「先生、人が…」


全力で校内を駆け抜ける。


振り返る生徒の中を。




「いいから、早く!!」

ヒオカ先生は
手を離さなかった。



白いシャツに
光が反射して眩しかった。


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