ゴシップ・ガーデン
葬儀会場の敷地から離れた場所で、
出棺を見送ることにした。
あの人を乗せた車が、
親族が取り囲んだ門から
もうすぐ出てくる。
「近くで見送らなくて
良かったの?」
ヒオカ先生は、
あたしを気遣うように聞いてきた。
「うん。いいんだ。
ここで十分」
遠慮なんてしてない。
本心だ。
一本のサックスの音色が
響き渡った。
サックスの演奏に導かれた
出棺だった。
あの人が好きな場所は、
ジャズの生演奏が楽しめるバー。
気の利いた出棺だな、と思った。
サックスにも種類があるのかな?
いつも学校で聞いていた
サックスとは音域が違う。
一言で言うなら
ちょっと渋めな感じの音に
聞こえた。
大人のあの人に、
合ってる音だ。
そのとき、
どこからか一羽の揚羽蝶が
舞い降りるように
フワリとあたしの頭にとまった。
それはとても短い時間だったけど、
揚羽蝶は、とまったまま
パタパタと羽を数回羽ばたかせ、
髪を撫でた。
それから揚羽蝶は
眩しい青い空へ向かって
高く舞い上がり、
霊柩車とともに視界から消えた。
「…今の、お父さんかもね」
「え?」
「来てくれてありがとうって
言いに来たんだよ」
「…蝶になって?」
「うん…って、
クサいこと言っちゃったな。
恥ずかしー」
しまった、って顔して
耳を赤くしたヒオカ先生を見て、
思わず吹き出してしまった。
声を立てて笑った。
笑ったまま、涙がこぼれた。
あの人が、
初めてあたしを撫でて消えた。
ほんとにそんな気がして、
ほんのちょっと、
救われた気がした。
出棺を見送ることにした。
あの人を乗せた車が、
親族が取り囲んだ門から
もうすぐ出てくる。
「近くで見送らなくて
良かったの?」
ヒオカ先生は、
あたしを気遣うように聞いてきた。
「うん。いいんだ。
ここで十分」
遠慮なんてしてない。
本心だ。
一本のサックスの音色が
響き渡った。
サックスの演奏に導かれた
出棺だった。
あの人が好きな場所は、
ジャズの生演奏が楽しめるバー。
気の利いた出棺だな、と思った。
サックスにも種類があるのかな?
いつも学校で聞いていた
サックスとは音域が違う。
一言で言うなら
ちょっと渋めな感じの音に
聞こえた。
大人のあの人に、
合ってる音だ。
そのとき、
どこからか一羽の揚羽蝶が
舞い降りるように
フワリとあたしの頭にとまった。
それはとても短い時間だったけど、
揚羽蝶は、とまったまま
パタパタと羽を数回羽ばたかせ、
髪を撫でた。
それから揚羽蝶は
眩しい青い空へ向かって
高く舞い上がり、
霊柩車とともに視界から消えた。
「…今の、お父さんかもね」
「え?」
「来てくれてありがとうって
言いに来たんだよ」
「…蝶になって?」
「うん…って、
クサいこと言っちゃったな。
恥ずかしー」
しまった、って顔して
耳を赤くしたヒオカ先生を見て、
思わず吹き出してしまった。
声を立てて笑った。
笑ったまま、涙がこぼれた。
あの人が、
初めてあたしを撫でて消えた。
ほんとにそんな気がして、
ほんのちょっと、
救われた気がした。