ゴシップ・ガーデン
“あの人”、とは、
“あの人”のことだ。
あたしの本当の父親。
この店は、あの人の
行きつけの場所。
あたしは知っていた。
だってここは、
あの人と会った場所だから。
母には言ってなかったけど、
あの人に連れてこられた場所
だったから。
母もあの人と一緒に来ていたんだ。
「でも、何年ぶりかしら。
もう、十数年ぶりね。
でも変わってないな」
母は懐かしそうに
店内を見渡した。
「シイナ何飲む?
ここはね、ジンジャーエールが
美味しいのよ。
店で作ってるの」
母は、
あの人と同じことを言った。
知ってるよ。
でも黙っていたら、
「ジンジャーエールで
いいわよね?」と言って
母は勝手に、
バーテンダーに
ジンジャーエールを2つ注文した。
あたしと母の前に
ジンジャーエールが置かれた。
それから、マスターは、
あたしの右隣の空席に、
ウイスキーのジンジャー割を
置いた。
そして、母の前には
葉巻が置かれた。
「身体に悪いのは
わかってるんだけど。
ゴメンねシイナ。
この一本だけ」
母は葉巻に火をつけ、
煙が出るその葉巻を
あの人のウイスキーの横に置いた。
弔いなんだな、とそう察した。
“あの人”のことだ。
あたしの本当の父親。
この店は、あの人の
行きつけの場所。
あたしは知っていた。
だってここは、
あの人と会った場所だから。
母には言ってなかったけど、
あの人に連れてこられた場所
だったから。
母もあの人と一緒に来ていたんだ。
「でも、何年ぶりかしら。
もう、十数年ぶりね。
でも変わってないな」
母は懐かしそうに
店内を見渡した。
「シイナ何飲む?
ここはね、ジンジャーエールが
美味しいのよ。
店で作ってるの」
母は、
あの人と同じことを言った。
知ってるよ。
でも黙っていたら、
「ジンジャーエールで
いいわよね?」と言って
母は勝手に、
バーテンダーに
ジンジャーエールを2つ注文した。
あたしと母の前に
ジンジャーエールが置かれた。
それから、マスターは、
あたしの右隣の空席に、
ウイスキーのジンジャー割を
置いた。
そして、母の前には
葉巻が置かれた。
「身体に悪いのは
わかってるんだけど。
ゴメンねシイナ。
この一本だけ」
母は葉巻に火をつけ、
煙が出るその葉巻を
あの人のウイスキーの横に置いた。
弔いなんだな、とそう察した。