ゴシップ・ガーデン
できるだけ冷静に伝えた。



母は静かに微笑んで、


「…そう。

元旦那君から聞いてたわ。
シイナに伝えたこと。

シイナは行かないって
言ってたって聞いたけど、

そう、行ってくれたのね。

ありがとう」


あたしに向かって頭を下げた。



「…別にお母さんに
お礼言われる覚えないんだけど」



母は、首を横に振った。

痛々しい笑みを浮かべて。


「ううん。
今まで“あの人”のことで、
シイナには辛い思いを
させてきたと思ってる。

シイナに、
ゆるしてもらえると
思ってるわけじゃないけど
…でも」



あたしは母の言葉を遮った。


「ゆるすとかゆるさないとか、
一言で言えるほど
簡単じゃないよ。

でもさ、
“あの人”がいなかったら、
今のあたしがいないってことは、
紛れも無い事実なんだから…」



仕方ないじゃんか。



お母さんとあの人の気持ちなんて
解らないし、解りたくもない。



不誠実だった
あたしの本当の父親。



許す許さないとか、
認める認めないとか、
そんな単純な問題じゃない。



割り切れない気持ちを
受け入れて生きてくのが
あたしの宿命なんだろう。



きっと一生、
わだかまりは消えない。



けど、お葬式には
行って良かった。



行かなかったら、
もっと苦しくなってた。



今はそう思っている。






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