ゴシップ・ガーデン
友吾(ユウゴ)
っていうのは、
千夏姉の婚約者だ。


あたしの知ってる人を
先生が呼びすてにするのって、

何か変な感じ。



「千夏姉の家の飲み会に、
先生も来てたんだ!!
いつ来てたの?!」



「佐野さんと最新に会ったのは、
千夏がバイトで留守の昼間。
8月の始め頃だったかな…。
課題のノートを返しに
千夏の部屋に行ったんだ。

千夏はいないけど、
部屋に居候がいるから、
その子に渡して、
って言われて。

二度目は、飲み会。
たぶん、8月終わりごろ
だったかも」



ヒオカ先生の話を聞きながら、

あたしは記憶をたどって
考えこんだ。



「あたしのこと
すぐわかった?」


うなずく先生。



「なら、どうして
言ってくれなかったの?」



先生は、曖昧に笑って
首をひねった。


「佐野さんは、
覚えてなさそうだったし、

わざわざ話しかけるほどじゃ
ないかと思って…」



「…ゴメンなさい。
覚えてなくって。
千夏姉友だち多いし…。
何回も来てた人なら
覚えてたかもしれないけど…」

あたしは
言い訳みたいなことを口走った。



ヒオカ先生は、別に
気にしてない風に笑った。

性格なのかな?
控えめな笑い方。

眼鏡の奥の、
ぶれない温和な黒目。


見覚えある…かも?

もしかして…



「あの時は、
“シイナさん”って
名字かと思ってたんだ」



…!!


「先生、メガネ変えたでしょ?!」



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