ゴシップ・ガーデン
ヒオカ先生は、
あたしとの間に
何ごともなかったように、
平然と数学を教えてくれた。



どうして?

どういうつもりよ。




ヒオカ先生にとっては、
あたしの告白なんて、
“何ごと”でもなかったことなの?


唇をかみ締めた。



顔が見れない。



傷ついてた。



押さえめの声で解説しながら、
机に前屈みになった姿勢。

あたしのノートをなぞる指。



距離が近くて、ドキドキする。



ドキドキするたび、傷ついてた。



気まずい思いしてるのは
あたしだけ?



何ごともなかったかのように、
普通に“先生”なんかして、
腹立たしい気持ちになりながらも、

初めて勉強教えてもらったけど、
ヒオカ先生の説明は悔しいけど、
すごくわかりやすくて、



「理解できた?」


先生の言葉に、
あたしはうなずいて、



「…わかりました。
ありがとうございます先生」


うつむいたままお礼を言った。



教え終わったからすぐヒオカ先生は
立ち去ってしまうだろうと
思っていたら、


ヒオカ先生が
耳打ちするように近づいた。



「あとで話がしたいんだけどいい?」



顔を上げたら、

「メールするから」


そう告げると、
すっとあたしから離れて、
他の生徒のところへ移動した。




呆気にとられて何も言えなかった。



すぐに
ヒオカ先生から目をそらして、
ノートに向けた。



胸が張り裂けそうになった。




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