ゴシップ・ガーデン
だから、元カノの話は、
いきなりの話だったけど、
なんとなく納得がいった。



テーブルにパスタが並べられた。


考えこんでるあたしに、
元カノは、『食べてね』と
すすめる。


うなずきながら、


『…なら、なんでヒオカ先生は
進学しなかったんですか?』



素朴な疑問をなげかけたら、
ためらいがちに元カノは続けた。



『…実は、大学在学中に
修ちゃんのお母さんが
倒れちゃって。

大きな手術することになって。

修ちゃんには
大学入学を控えた弟もいたから、
両親に
経済的負担をかけたくなくって、
大学院進学をあきらめて
就職することにしたんだ。


大学で研究続けながら、
教鞭をとるのも
目標の一つだったみたいなんだけど、

別に大学教授に
教員免許はいらないけど、
練習の意味で教員免許をとったの。

結果的に高校の教員として
就職することになったんだけどね』



『そう…だったんですか…』


あたしはうつむく。


そんなことがあったんだ…。


あたし、
なぁんにも知らなかったんだなぁ…。




元カノは、
ふーっと長く息を吐いた。


『教授からの誘い。
修ちゃん、断ったらしいんだ』



『え…』


どうして、と呟くと、
元カノは首をすくねた。


『本当にもう
研究職に未練ないの?って、
何度も聞いたんだけど。

“今さらもういいんだ”って
言うだけ。

昔からあんまり自分のこと
話さない人だったけど。

本心では大学に戻りたいんじゃ
ないかなぁ…。

迷って、結果あきらめてる、
みたいな』



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